国会質問

第169回通常国会 総務委員会(2008年6月10日)

放送番組編集の自由について質問 <総務委員会>

「国会の機能は、放送文化の向上に向け、放送関係の法案を審議したり、基盤を整備したり、行政権の介入を監視したり、あるいは内部の不正、不法行為を追及するなど、報道の自由、表現の自由を守る立場を通すことにある!」


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 NHKの17年度、18年度決算審議に関する委員会で質問に立ちました。今日の質問は、「報道の自由、表現の自由(公権力の介入の禁止)」と「政治的中立性、公正性の確保」の関係について、国会審議において整理すべきだとの視点での質問を中心に行ないました。先日の総務委員会の与党議員の質問において、NHKの具体的な番組が取り上げられ、番組の政治的中立性を問う場面があり、懸案となってたからです。

 NHK会長、経営委員長ならびに総務大臣と議論を行なった後、総務委員長の見解を求めました。高嶋委員長からは、「総務委員会に置ける審議に際しても、個別の放送番組に対する発言は、その内容が番組編成権の干渉に及んだり、放送番組編集の自由を阻害するおそれがないものでなくてはならない」との見解が示されました。

【質問項目】
  1. 放送における公平性、中立性の確保に関して
  2. 国会における政治的中立性をめぐる論議のあり方について

1. 放送における公平性、中立性の確保に関して

○加藤敏幸 民主党・新緑風会・国民新・日本の加藤でございます。行田委員に引き続き質問をさせていただきたいと思います。

 冒頭に、17年度、18年度のNHK決算についてですが、決算というのは、予算も同じですが、数字が合っている、合っていない、こういう議論も対象ではありますけれども、報道機関であるNHKの場合にはそのような社会的信頼があるのか、それが毀損されていくというような事件が発生をしている、こういうことであれば、数字を議論する以前の問題としてNHKの本来の使命を発揮するという意味で大変大きな課題である、そういう視点で、インサイダーの問題は、非常に直近の課題であり、根が深い、こういう思いで決算審議の場を使って質問させていただいたわけであります。

 17年度決算について私どもは不同意という態度を決めております。それは、不正経理にかかわる事件を含め、予算編成のときに相当な議論が行われた中で、予算についは承服できないという態度をとりました。決算についても同様だ、こういうことでございまして、言ってみれば、インサイダーがあったから反対だとかそうだということではなくて、過去の大きな流れ、議論のプロセスの中で態度を決めているということでございまして、まはず、執行部には是非頑張っていただいて国民が望むNHKの使命を果たしていただきたい、こういう姿勢であることを冒頭、明らかにしておきたいと思います。

 さて、久保利参考人の答弁を先ほどお聞きいたしまして、まさにインサイダーという刑事事件、これは本質的にNHKに事業に携わる皆さん方が報道の自由をどうとらまえ、またそれに伴う責任というものを現実どう受け止めているかと、大変傾聴に値する答弁をいただいたと思っております。今後とも、報告書等を十分検討、理解をし、この委員会においてもすばらしい意見交換並びにいろいろな討議もやっていきたいと思います。

 本日は、そういった意味で、NHKの基盤である信頼を獲得する意味での報道の自由と、そして当然、公平性並びに政治的中立性と、こういう視点で質問をさせていただきたいと思います。

 まず、昨年末、放送法の改正を行いまして、その中におきましては、経営委員会における編集への介入を否定する法案修正を行いました。修正条文第16条の二項は、経営委員は個別の放送番組の編集その他の協会の業務を執行することができないと、このようにしたわけであります。また、政府からの要請放送に関しましても、報道の自由、編集の自由を保障することを前提に、放送法改正案、この原案に対する修正が行われ、これに関する確認の質疑が行われました。

 放送における公平性、中立性は、公共放送、特にNHKにおいては報道の自由あるいは編集の自由が保障され、報道や番組制作の現場にまでこのことが保障されると、こういうことになっております。同時に、放送の番組制作者は、報道の自由、表現の自由を享受する、このこととの引換えに、それにふさわしい見識、責任意識、責務を負っているということでございます。したがって、放送における表現の自由あるいは報道の自由が保障されるということは、まずは公権力が不当に介入しないということ、あわせて放送関係者が政治的中立性を失わないよう自律的に不断の努力を行っていくこと、そういうことが必要であると考えます。

 これまでの経過を踏まえ、それぞれNHKの執行部、経営委員会、そして所管される総務省、それぞれ代表者からのご見解を伺いたいと思います。

○福地茂雄・日本放送協会会長 NHKでは、不偏不党を掲げます放送法の心に倣いまして国内番組基準を策定しております。全国民の基盤に立つ公共放送の機関として、何人にも干渉されず、不偏不党の立場を守って、放送による言論と表現の自由を確保することを明記をいたしております。
自らを厳しく律し、絶えず公平公正であろうと努めることによって初めて公平公正という立場を確保できるというふうに考えております。今までも、これからも不偏不党を貫いてまいります。 以上でございます。

○古森重隆・日本放送協会経営委員会委員長 番組の公平公正、不偏不党を確保し、何人からの、あるいは外部からの活力や働きかけに左右されないということは公共放送NHKの言わば生命線だと考えております。委員のご指摘のように、こうした編集の自由が認められておりますのは、先ほど久保利さんもちょっとおっしゃいましたけれども、NHKが番組編集に当たって自ら厳しく律し、公共放送としての責任を自覚した上で絶えず公平公正であろうと努めることが言わば前提になっているというものだと理解しております。
  経営委員会といたしましては、改正放送法の趣旨を踏まえまして、個々の編集権については会長以下執行部が責任を持って行うものと認識しており、経営委員会として関与するものではないと承知しております。一方、こうした公平公正たらんとする努力が常に十分に行われているか、なされるよう、番組編集の基本計画の審議等を通じまして、これは経営委員会の機能でありますけれども、執行部の職務執行を監督してまいりたいと考えております。

○増田寛也・総務大臣 総務省といたしまして、放送法の趣旨を踏まえるということと、それから、今お話がございましたとおり、先般の放送法改正における当議院での修正の趣旨というものを真摯に受け止めてそして放送行政に取り組んでいきたいと、これが総務省の考え方でございまして、そうした中で、NHKにおかれましても、放送法の趣旨を踏まえて自主自律の中でこの公共放送としてふさわしい優れた放送番組の提供に努めていただきたいと、このように考えております。

○加藤敏幸 どうもありがとうございました。
  そういう、基本的な考え方にのっとって、今後ともよろしくお願いをしたいと思います。 さて、さる5月20日の当総務委員会におきまして、NHKの参考人に対し質疑が行われました。その質問者の指摘内容を真剣に受け止める中で、私なりに問題点を整理をしてみました。大きく二つに集約できるのではないかということであります。

 一つは、委員会で指摘された5月11日放映のNHKスペシャル「日本の社会保障が危ない」というこの報道番組の編集方針が本当に政治的中立性を保たれているのか、並びに政治的中立性を担保するために関係者の自律的な編集責任が貫徹されたかどうかと、こういう問題ではないかと思います。

 二つ目は、こういったNHKの個々の番組に関して委員会の場においてこれを取り上げ、その政治的中立性を議論するというプロセスが、報道の自由とか表現の自由とか、そういう非常に大切な価値観との関係においてどのような影響を及ぼしていくのか。これは、報道する側の受け止め方も含めてどうなのかと、こういう課題も持っていると考えております。

 そこで、第一の問題について申し上げれば、事例として、当該の報道に関し保険料滞納についての背景説明がなかったこと、つまり、現在、国民皆保険制度が完備されている日本において、特に低所得者に関して保険料の減免措置や生活保護制度がある中で、保険料滞納によって保険証を取り上げられ、それで病院に行けなくなって結果として死に至ったということは、言ってみればこの日本全体の中で制度上極めて特異な現象である、この特異性をまず説明すべきではないかと、こういう主張であったと受け止めております。つまり、起こっている現象面のみ取り上げて、あたかも政策不在のような深刻な状況を一般的現象として取り上げているのは、いたずらに不安を拡大させるという意味において問題ではないかというご主張であったと思います。

 これはこれで一つの主張であると。ただし、報道する側の立場でいえば、毎回一から十まですべてを一々説明するということでいけば全く時間が足らないわけですから、時間に追われる報道は成立しないという反論もあろうということもございます。

 また、こういった保険料滞納がかなりの規模で現実広がっている状況が社会的に問題視されているという状況の中で、行政なり立法府、立法の責任ということを当然追及していくという姿勢は報道機関にとって当然あり得るということをも考えられるということで、これはそれぞれに理のある主張ではないかと受け止めております。

 次に、問題の指摘といたしまして、取材対象とした病院がよりによって二つとも特定政党の政策を支持している団体の関係病院であったこと、こういう問題提起がされています。このことは、取材、編集したスタッフに特定政党にある種シンパシーを持つ方がおられるのではないかと、こういう疑念を抱かせる、あるいはこういったスタッフを抱えていたのではNHKの政治的中立性は保てないんじゃないかと、こういうご主張も内部に含んでいたと伺われます。

 二つの病院の取材先選択が偶然であったのか、あるいは意図的であったのかということにつきましては、これはNHK自身の問題として対応されることと、あるいは調査をされるということだと思います。しかし、一般論として考えれば、同じような医療に関する番組を編集する際、先ほど指摘された政党支持、あるいは他の政党を支持しておられる団体の病院のみを殊更取材しようということになると、なかなか取材選択として難しいというようなことも発生するわけでありまして、この手の問題については番組制作現場において、特に取材対象の選択という面では十分な吟味と当然プロフェッショナルとしての判断が必要ではないかと。

 NHK側の今井副会長の答弁にございましたように、政治的中立性を確保するための様々な手だてが現場として講じられている、またこれはしなければならない、それはNHKのプロの皆さんが長年培われてきた政治的中立性確保のためのノウハウ、これを持っておられるし、そのことを駆使して私は展開をしていくと、こういう必要性があるのではないかと思います。

 ただ、いろいろと申し上げましたけれども、今回指摘のあったような疑念を抱く視聴者も間々おられたということでございます。前回の今井副会長の国会答弁で理解をしたわけでございますけれども、その後も含めまして、NHKとして、今申し上げましたような問題についての対応なり新たな見解等がございましたら披瀝をしていただきたいし、現時点において政治的中立性あるいは公平性の確保に関しどういう努力をされていくのか、方針などあればご説明いただきたいと思います。

○福地茂雄・日本放送協会会長
私は、会長就任以来、役職員に対しまして、放送にあっては自主自律の姿勢を堅持し、正確でかつ公平公正、不偏不党の立場を取ることが、守ることが基本だと常々言っております。これからもこうした姿勢を堅持いたしまして、視聴者の皆様の信頼いただけるように努力してまいりたいと思います。
  このご指摘のございましたNHKスペシャルでは、現状での課題を映像で紹介しました上で、スタジオで三人の関係者や識者がそれぞれの立場から日本の社会保障について発言いたしました。番組として多角的視点それから公平性を確保していると考えております。個別の番組で異なる意見を紹介できないときでも、放送全体として公平性を確保するように努めておりますし、これからも努めてまいります。以上でございます。

○加藤敏幸 是非ともそういう姿勢を堅持し、それがよく分かるようなことが必要だと思いますし、同時に、報道機関として常に勇気を持って対応していくことも必要ではないかと、このように考えております。

 さて、この問題に関しまして、更に基本的な論議をさせていただきたいと思います。
報道関係者、テレビ、ラジオ制作スタッフ含めまして、思想、信教の自由、あるいは政党支持の自由という個人の自由と、一方、報道や番組制作における政治的中立性、これをどのように保障していくのかという問題は、これは非常に大きな問題、日本に限らず報道機関としての大変重要な課題であると思っています。当然、憲法によって、たとえ報道にかかわる者であっても国民としての思想、信条、宗教、政党支持の自由を持っているわけであります。当然、NHKとして職員の思想、信条調査をやっているわけではないと、このように考えます。

 この個人が持つ自由と報道、番組制作の政治的中立性の確保に関し、NHKとしてどのような基本的姿勢で臨んでおられるのか、お伺いしたいと思います。

○福地茂雄・日本放送協会会長 放送に当たります職員やスタッフも当然国民でございまして、憲法によって思想、信条の自由が保障されているわけでございます。ただ、放送という業務を遂行する上では、職員とスタッフは、不偏不党、公平公正を定めた放送法でございますとか、あるいはNHKの国内番組基準それから国際番組基準、新放送ガイドラインにのっとりまして取材、制作業務に当たらなければならない、かように認識いたしております。 以上です。

○加藤敏幸 個人の思想、信条、政党支持の自由というのは憲法が掲げる基本的な権利であり価値であるということでございますけれども、同時に、職業倫理としての報道の公平性、中立性ということを十分職員全員が理解をされた上でより良い報道に携わっていただきたいということを一言付言しておきたいと思います。

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2. 国会における政治的中立性をめぐる論議のあり方について

○加藤敏幸  最後に、少し長々となって申し訳ないんですけれども、一般論としてこの場で考えておくべきこととして、つまり国会が個々のテレビ番組を取り上げてその政治的中立性を議論するということの言ってみれば政治的あるいは制度的な問題について考えてみたいと思います。
  既に放送法によって公権力は放送の自由を保障しなければならないし、NHK経営委員会さえも編集、個別編集には介入できないという構造をつくっているわけであります。虚偽報道や「やらせ」などについては当然NHK内部の様々な自己管理システム、これが働き、加えてBPOという第三者機関をも対応すると、こういう仕組みをつくってきたということでございます。
  そういう仕組みがあるといえども、余りにも公平性を欠く報道や国民に誤った情報を与えるような番組であれば、あるいは今回の株のインサイダー取引など法令に違反するものなどに対しては、国会は自らこれらの問題を取り上げ、その責任の追及あるいは対処策、改善、改革を要求し、かつそれを望む、これは当然のことだと。したがって、個々の番組について一切国会の場において議論をできないということではないと思うんです。ここははっきりしていると思うんです。
  国会が行政や公益法人などの問題を取り上げること、例えばNHKに関して経営問題や不祥事に関する問題を取り上げこれを調査したり、参考人を呼んで実情を聴くということは、社会の公平公正性を追求し、不正を防止するという全体の利益を求める当然の政治的行為であると考えております。
  しかし、そこで留意しなければならないのは、国会、立法府は三つの政治権力の重要な一つであり、また国政調査権という個人や企業、団体の持つ情報をプライバシーを制限してまで調査できる権利を保有している、大きな意味で公権力の一部を有している国会が個々のテレビ番組に細かいチェックを入れるということは、基本的には行き過ぎではないかと、このように考えております。
  国会の機能は、むしろ放送文化の向上に向けて放送関係の法案を審議したり、基盤を整備したり、行政権の介入を監視したり、あるいは内部の不正、不法行為を追及するなど、報道の自由、表現の自由を守る立場を通すと、ここにあると考えております。その最前線がこの参議院の総務委員会であるということを申し述べたいと思います。
  これらのことを再認識し、そして報道の自由や表現の自由を守るために国会はどのような役割、機能を持つべきか、果たすべきかという視点に立ち、私ども一人一人、総務委員会としてNHKが放送文化の更なる高揚と報道、放送の自由を確立できるように応援をしていくと、そういうことが必要であると考えております。
  もしよろしければ、以上の私の問題意識、認識を受け止めていただきまして、尊敬する総務委員長のご見解等があればお伺いをしたいと、このように思います。

○高嶋良充・総務委員長 委員長に対する質問でございますので、若干協議をさせていただきますので、速記を止めてください。

 〔速記中止〕(理事 場内協議)

○高嶋良充・総務委員長 速記を起こしてください。
 筆頭理事間協議も含めまして、委員長として見解を申し述べた方がいいと、こういうことでございますので、委員長の方から、ただいま加藤委員からの質問について見解を申し上げたいと思います。

 NHKを始めとする放送局には、国民の知る権利に奉仕するため、表現の自由が確保されております。放送法においても、何人も法律に定める権限に基づかなければ放送番組に干渉、規律することができない旨の放送番組編集の自由が保障されているわけでございます。

 しかし一方では、公共放送としてのNHKには、その番組編成に当たって政治的公平性、中立性をしっかりと担保していただくことが求められていることもこれまた事実でございます。

 本総務委員会は、放送を所管する委員会として、NHKの予算や決算等の委員会審議を通じて、放送の健全な発展と公共放送としての番組の政治的公平性の確保を図り、さらに、報道の自由や表現の自由を守っていくという責務を有しておるというふうに考えております。

 以上の観点から申し上げますと、総務委員会における審議に際しても、これらのことを再認識をしていただいて、個別の放送番組に対する発言は、その内容が番組編成権の干渉に及んだり、放送番組編集の自由を阻害するおそれのないものでなければならないというふうに思っております。

 もとより、委員会質疑に当たっての議員の質問権の尊重は当然のことでございますが、しかし、委員会における発言がNHKの放送番組編集の自由を侵害しているのではないかとの疑念を招くようなこととか、あるいは番組制作を萎縮させることがないような、そういう慎重な、より注意深い質問に当たることが委員各位には求められているのではないかというふうに思っております。

 委員長としては、この際、この点につきまして、改めて委員各位にも認識を深めていただきたいと考えておりまして、以上の見解を申し述べて、加藤委員の質問の答弁に代えさせていただきたいと思います。

○加藤敏幸 委員長に深甚なる感謝の意を表しまして、質問を終わります。ありがとうございました。