2010年3月24日
在留外国人の本国の子供に「子ども手当」を出す問題
(1)増加する在留外国人の実態と課題
鳩山内閣が、民主党のマニフェスト実現に向けて取り組んできた「子ども手当法案」が現在、参議院で審議されています。
衆議院での審議過程を含めて、この「子ども手当法案」の課題の一つとして浮かび上がったものが、本国に子供を残して日本で生活している在留外国人に「子ども手当」を支給するという問題です。
我が国では、一段と国際化が進む中で、就労や留学や結婚で日本に在留する外国人(外国人登録者)は年々増加し、平成20年度で約222万人に上っています。日本に在留する外国人は、入国管理と外国人登録、そして各自治体の住民サービス行政の一体化によって、厳格かつ柔軟な管理下に置かれています。日本に住む外国人については、不法滞在・不法残留の問題や外国人犯罪のことがよく取り上げられますが、ほとんどの在留外国人は日本社会の中で法を守り、社会的・経済的な貢献を行っています。また、所得のある人は当然、義務として納税をし、社会保険の加入も義務づけられていますが、当然、住民として社会保障や教育をはじめとする様々な行政サービスも受けています。
ここで、在留外国人を在留資格によって分類すると次のようになります。
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在留資格 |
活動に基づく在留資格 |
就労可の在留資格 |
外交官、国際機関職員、大学教授、芸術家、宗教家、報道関係者、会社経営者、教育者、技能労働者、興行の歌手・ダンサーなど |
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就労不可の在留資格 |
収入が伴わない文化活動、観光・保養などの短期滞在、留学・就学・研修など |
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内容で就労可否が決められる在留資格 |
ワーキングホリデー、技能実習生など |
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身分に基づく在留資格 |
永住者 |
一般永住者 |
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特別永住者 |
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日本人の配偶者等 |
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永住者の配偶者等 |
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定住者 |
インドシナ難民、条約難民、日系3世、外国人配偶者の実子など |
これらの在留資格を得るためには、来日する前に、日本の大使館・領事館でビザの発給をしてもらい、また日本に来てからは在留期間の延長や在留資格の変更する場合は入国管理局に申請して許可を得なければなりません。第二次大戦終了前から日本に在住していた朝鮮人・台湾人とその子孫は特別永住者として特別な手続きをすることなく在留することができますが、一般的には、就労ビザや留学ビザの取得は厳しいものがあると言われています。また、偽装結婚による不法入国を防ぐためにも、日本人との結婚による在留資格についても厳しい審査が行われています。
国際化の進展とともに、人とモノとサービスの行き交いが活発化していく中で、我が国も日本で活動し生活している在留外国人と上手に共生する道を探っていかなければなりません。とくに、日本を理解し、日本の技術や知識を母国の発展に役立ててほしいとして福田政権が実施した「留学生30万人計画」も継続する必要がありますし、製造業や農林水産の分野、あるいはサービス業や介護・看護の分野における労働力不足を外国人に頼っていかざるを得ない国内事情もあります。また、アジア人を中心とする国際結婚も一段と増え続けています。今後も在留外国人が増えていく流れは変わらないと思われます。
(2)在留外国人の本国の子供の扱い
今回創設される「子ども手当」については、在留外国人で母国に子供を残している場合でも「子ども手当」が支給されるという問題が批判されています。これは、「子ども手当」の支給要件や手続きが、行政コストや手続きの関係から、今年度については「児童手当」のシステムをそのまま踏襲することになったことによります。とくに、「子ども手当」の場合は「児童手当」とは違って所得制限がなく、納税や所得に関する書類提出がないため、多くの在留外国人の申請が殺到するのではないかと懸念されています。さらに、本国での養子縁組などによる過大請求の可能性も指摘されています。
この問題は、すでに国会での野党質問やマスコミ報道で明らかにされ、批判の声も高まってきていますが、これらの批判の声を大別すると、
①在日外国人に子ども手当を支給すること自体が問題である。
②対象の子どもは日本に居住する子どもとし、本国に住む外国人の子どもを対象にすべきでない。
③不正請求や過大請求を防止するために、母国の子どもの監護状況を厳格にすべきである。
--という3点です。
このほか、選挙目当てのバラマキ政策として「子ども手当」自体を批判する声もありますが、これは民主党政権そのもの、あるいは民主党マニフェストへの批判と言えます。
①の批判に関しては、これまでの国際条約上の経過があったことを考慮すべきです。我が国は、昭和53年に国連の「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約」(国際人権A規約)と「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(国際人権B規約)を批准し、在留外国人の諸権利を認める国内法の整備をはかり、さらに昭和56年には「国連難民条約」を批准し、社会保障政策における外国人差別の撤廃をはかりました。これにより、昭和47年当初に日本国籍を持つ人に支給を限定していた児童手当の国籍要件を撤廃したのです。この時は、国民年金、児童扶養手当、特別児童扶養手当、障害児福祉手当、特別障害者手当及び経過的福祉手当、国民健康保険などで国籍条項が廃止されました。社会保障政策において、外国人を内国人と同等に扱うことは国際的なルールになっているのです。
②の批判については、さまざまな議論があります。「児童手当」では、国籍要件を廃止した際に、本国に住む子どもを対象にしたわけですが、現在まで、実際の支給例も多くあり問題視されてきませんでした。しかし、「子ども手当」を本国に残した子どもも対象にすることは、子育て支援・内需拡大という本来の政策目的から外れるものであり、納税者の立場からも理解が得られないと思います。特に、養子縁組をした子どもも対象になるため、申請が増えれば膨大な予算を費やすことにもなります。この点は、制度の改良にむけて議論すべきだと考えます
③については、前項の本国の子どもへの支給を認めたとしても、不正支給は断じて許されるものではないという当然の意見です。請求に関するチェックは、支払い窓口である市町村が実施しますが、母国の子供を養育しているのかどうかは現地チェックが出来ません。「児童手当」では、別居監護の申請書、出生証明書、自国の住民票、銀行からの送金証明書等を添付することになっていますが、養育関係を証明する書類の提出徹底と様式統一化で対応すべきだと考えます。特に、これまで児童手当を申請していなかった在留外国人を中心に厳格な書類審査が必要だと考えます。
いずれにせよ、国会で鳩山総理大臣や長妻厚生労働大臣が答弁しているように、この法案は1年間の時限立法であることからも、実際に1年間運用し不正請求や過大請求などの実態を見て、制度改革をはかっていくべきだと考えます。この場合も、「児童手当」で講じた施策を一方的に切り捨てることについて国際的な批判が起こる可能性もありますので、慎重な対応を取ることも必要でしょう。
また、海外に居住する日本人で子どもを日本に残している場合は手当支給の対象外となる問題も再検討していく必要があると考えます。
