2010年8月25日
大学生の就職難と政府の対策
1、深刻化する大学生の就職難
文部科学省は8月5日に公表した「学校基本調査」によると、今春の大学卒業生(4年制)の就職率は60・8%(前年比7・6ポイント低下)にとどまり、非常に厳しい就職状況が明らかになりました。また、大学院などへの進学もせず就職もしていない人は約8万7000人で、昨年より約1万9千人も増えています。一方、短期大学についても、就職率が65.2%(前年比4.7%低下)で、進学も就職もしていない人は約1万人となっています。
多くの大学卒業者が就職できずに、収入を得る機会と職業能力を向上させる機会を失っていることは、個人的な損失であるばかりでなく、社会としても大きな損失です。
政治としても、この異常な事態は見過ごせないものとなっています。私は、民主党政策調査会の文部科学部門会議副座長として、この問題解決のための政策作りや予算確保に全力をつくしてまいります。
2、問題の所在と政策の模索
大学生の就職難の最大の原因は「景気の低迷」と「労働市場の構造変化」にあります。経済活動の停滞は、企業の新卒採用減へと直結します。また経済のグローバル化に伴う海外生産の拡大や日本企業における外国人採用の拡大、あるいは中高年労働者の雇用維持を優先した若年者採用の抑制は、大学新卒者の就職の門戸を大きく狭めています。
この点で、就職問題解決の特効薬は、景気対策、経済成長政策にあるのは明白なのですが、しかし、日本企業にとっては、国際的な経済・金融・為替問題の発生、あるいは中国・韓国をはじめとするアジアの工業諸国との熾烈な競争が目の前に立ちふさがっており、拡大成長路線に立つ経営に踏み込めない状況にあります。政府・日銀としても、国の財政事情や金融政策の選択肢の狭さから、思い切った景気対策を行うことができないという事情もあります。
しかし、政府・与党としては、さまざま制約条件があっても、新たな経済成長を促す政策を展開し、必要な予算を確保すべきだと考えます。
一方、採用する側の企業に注目すれば、日本の多くの企業が「新卒一括採用」方式をとっており、これが新卒者の就職難の大きな要因になっているのです。最近は、若年既卒者を新卒者と同じ枠で採用対象とている企業も増え続けおりますが、その割合は20%強にとどまっています。この採用システムを変えない限り、景気の動向によって就職できなかった大学生は、再び就職活動をするチャンスさえも失うことになるのです。
内閣府の特別機関である「日本学術会議」は、7月22日にまとめた「大學教育の分野別質保証の在り方について」において、大学既卒者についても数年間は"新卒扱い"とすることを企業側に求める提言を文部科学省に提出しています。すでに、政府も既卒者の積極的採用について経営者団体に申し入れをしていますが、実態は一向に改善していません。関係者のさらなる努力を期待したいと思います。
3、「青田買い」と採用システムの問題
大学生の就職難問題に関連し、採用システム自体の問題について言及せざるを得ません。それは、就職戦線が極端に早期化し、大学教育に大きなひずみを生んでいるということです。学生たちは、大学3年の夏ごろから「就活」をスタートさせていますが、本来なら、大学3年生は勉強やサークル活動に励むなど学生生活の真っただ中にある時期なのです。
先の日本学術会議の「報告書」は、大学教育の質を向上させるため、学生が身に付けるべき知識や能力を学問分野ごとに示す基準を作ることも提言しているわけですが、就職活動の早期化が与える影響を懸念し、「就職活動と大学教育を両立させるための解決策を見いださないと日本社会の大きなマイナスになる」と警告を発しています。また、具体的な問題解決策として、企業と大学がルールを作り、学業に支障のない週末や長期休暇に就職活動を集中することや、地方の学生が大都市で宿泊する際の補助制度の必要性なども提言しています。
これらの提言については、大いに参考にしたいと考えます。
4、政府としての対策の推進
政府は、8月21日に、今日の新卒者の就職難問題の解決に向け、菅総理大臣の直接の指示により、各省庁を横断する「新卒者雇用・特命チーム」を作って対応することを決定しました。
「特命チーム」は、①短期政策プランとして、本年4月に就職できなかった人の就職支援、来年の新卒者の就職支援・雇用確保のために強化すべき政策、②中長期政策プランとして、「すべての新卒者が雇用される社会」を実現するために取り組むべき、行政・学校・企業・地域全般にわたる政策」をとりまとめて総理大臣に報告し、政府は、これを参考に必要な予算を確保して政策を実行するという方針になっています。
とくに、「短期政策プラン」としては、現在、地方の学生と都市部を結ぶ相談員の増員、地域のハローワークとの連携強化、地方の学生の都市部での就職活動の負担軽減策、大学における働く場の創出(研究プロジェクトの参加や図書館等への雇用など)が検討される予定です。
この「特命チーム」における政策の検討と政府の政策実施については、進学も就職もしない本年の大学既卒者約10万人の雇用を確保するには限定的になるかも知れませんが、大きな成果があがるよう期待したいと思いますし、国会での審議においても、より具体的な施策となるよう提言していきたいと思います。
