政策レポート

2010年9月 3日

「人事院勧告」に対する今後の対応

1、人事院勧告と政府の対応

 人事院は、8月10日に、月例給を平均0.19%引き下げ、ボーナス0.2ヶ月引き下げなどを内容とする「職員の給与改定に関する勧告(人事院勧告)」を内閣と国会に提出しました。「人事院勧告」とは、国家公務員の労働基本権(協約締結権と争議権)を制約する代償措置として、人事院が民間の賃金など労働条件を調査してこれに見合う賃金改定などを政府に勧告する制度です。

 政府は同日、「給与関係閣僚会議」を開催して、この取扱いを協議しましたが、「諸般の事情を踏まえて今後さらに検討を進める」として結論を出すには至りませんでした。人事院勧告の実施に関しては、これまでも、時の内閣が結論を出し、そして関連法案を国会に提出して議会の承認を得るという手続きをとることから、常に秋の臨時国会で与野党がぶつかる政治課題となってきました。

 「諸般の事情」については、主として、政府部内や関係労働組合における次の三つの意見があることが考えられます。

(1)「人事勧告制度が、国家公務員における労働基本権の制約の代償措置であること」による「勧告を尊重する」という基本的意見。(政府内では、厚生労働大臣、総務大臣が主張)

(2)「現下の厳しい経済社会情勢や、国の財政状況を踏まえれば、国民の理解を得るためにも、公務員給与については、厳しい姿勢で臨むことが求められており、慎重に検討すべきである」とする意見。(財務大臣、経済財政政策担当大臣、公務員制度改革担当大臣が主張)

(3)「2年連続の引き下げは、公務員の生活と地域経済などに与える影響が大きく、労使の協議を尽くすべきである」とする意見。(連合など労働組合が主張) 

 

2、民主党内における議論

 民主党内では、この人事院勧告について与党の立場からどのように対応するかについて、「公務員制度改革プロジェクトチーム」(座長・桜井充参議院議員、事務局長・加藤敏幸)を立ち上げて検討することになり、すでに3回にわたり意見交換をしています。

 党内の意見としては、従来通り、労働基本権の代償措置としての「人事院勧告」を尊重してこれを完全実施すべきだという意見がある一方で、「2010年マニフェスト」において、国家公務員の総人件費の2割削減を掲げていることから、この目標を実現していくために、公務員の賃金水準の見直しを視野に入れる必要があるとする意見があります。この後者の意見と関連して、財政再建という大目標を達成していく過程で、公共サービスの水準見直しに国民の理解を得るためには、国会議員や中央省庁の公務員が率先垂範を示す必要が高まっているという意見も強く見られます。

 また、人事院勧告の完全実施を求める意見として、昨年5月、民主党が主導して成立した「公共サービス基本法」(議員立法)で掲げられた「良質な公共サービスの提供」と「これを担う公務員の労働条件の確保」という立法理念を実現するためにも、公務員の賃金についても十分配慮しなければならないという意見もありました。

 

3、急がれる労働基本権の付与 

 このように、人事院勧告の取り扱いをめぐる議論は大きく二つありますが、共通しているもの、地方公務員にも波及していく国家公務員への労働基本権の付与について早く結論を出すべきだ、というものです。

 今回の「人事院勧告」では、公務員の労働基本権制約の見直しについて「その目的を明確にし、便益・費用等を含め全体像を提示し、広く論議を尽くすこと」と言及しています。一方で、「公務特有の基本的枠組みと特徴(市場の抑制力が欠如している等民間と大きく相違していること)を十分踏まえること」との記述がありますが、これは国家公務員への労働基本権付与が自動的に行政のコストアップにつながるかのような印象を与えています。民主党としては、そのような懸念が持たれないように、当事者間の調整努力が促進され、議会の適切な関与が行われるなど、国民的な理解が得られる「自律的労使関係制度」が築かれることを望んでいます。

 いずれにせよ、国家公務員への労働基本権付与にかかわる制度の枠組みと具体的内容に関し、早急に党としての考え方をまとめていく必要があると考えます。

 公務員制度改革PTとしては、今後も引き続き、人事院勧告の扱いについてさらに検討を深め、できるならば一定の考え方を政策調査会役員会に具申するとともに、国家公務員への労働基本権付与のための具体的検討と法案化のための作業に入っていくべきだと考えます。