2004年12月22日
郵政民営化を考える 「現在の政府案は目的不明で賛成できない」
郵政民営化問題は、小泉首相が主導する構造改革の中心テーマになっており、平成16年9月10日には基本方針が閣議決定され、現在、法案策定作業が着々と進められています。しかし、郵政を民営化することが国民にとってどのような意味を持ち、今後国民生活にどのように影響していくか、よく分からない面があります。そこで、これまでのさまざまな議論経過を参考しながら、私なりの考え方を述べてみたいと思います。
まず、政府が考えている郵政民営化の概要は、次の通りです。
1、現在の日本郵政公社を業務別に、(1)窓口ネットワーク会社、(2)郵便事業会社、(3)郵便貯金会社、(4)郵便保険会社(現簡易保険)の4つに分割し、この4つの会社の持ち株会社を設立し、株は政府が100%保有する。その時期は2007年4月とする。そして、10年の移行期間を経て政府保有株式を3分の1以下にする。
2、郵便事業会社の郵便(封書・はがき・小包など)については全国一律(ユニバーサル)サービスを維持する。このために、優遇措置を設ける。
3、郵便貯金と簡易保険については、民営化後の新規契約については政府保証を廃止する。民営化前の契約については、公社承継法人が引き継ぎ、資産運用は新会社に委託し、損益は新会社に帰属させる。
4、新会社は民間企業と同様に納税義務を負わせ、郵便貯金会社と郵便保険会社は民間企業に適用される金融関連法令にもとづく義務を負わせる。
5、職員は国家公務員の身分を離れる。
さて、これらの改革案に対して、現在、多くの問題点・疑問点が投げかけられています。
(1)民営化の目的が不明確
問題点の一つは、まず何のために郵政を民営化しようとしているのか全く分からないことです。小泉首相は、郵政民営化は国民の利便性を向上させるとか、経済を活性化させることになると主張しています。また小泉首相を支持する有識者も「見えない国民負担を軽減する重要な政策」と位置づけをしています。しかし、一体どのようなプロセスを経て民営化のメリット(経済の活性化や国民負担の軽減)が生じてくるのか、明確な説明はありません。一説では、郵貯・簡保の膨大な資金量に目を付けているアメリカの強い要望があるとも言われていますが、とにかく現在の小泉首相の郵政改革は、先に民営化ありきで、郵政事業は本来どうあるべきか、国民にとってどのような姿が望ましいのか、といった根本的な議論に欠けています。
加えて、現在の郵政公社が発足したのは平成15年4月1日であり、今年は、発足当初に策定された「中期経営目標(平成15年度から18年度)」の2年目であります。現公社での運営や十分であるのか、あるいは不十分であるのかの判断は、少なくとも当初策定された4年間の経営目標の遂行状況を見極めてからでも遅くはないと思います。
(2)民間企業参入の問題
今回の改革案で不思議に思えるのは、郵便事業の分野では民間企業が参入を表明していますが、この民間企業の参入に対しては厳しい規制を課し、逆に民間の努力で築き上げてきた宅配便の分野では郵政公社がやすやす進出する仕組みを作ろうとしていることです。民間企業の参入を事実上不可能にするような厳しい規制を設けながらの民営化は公平さに欠けます。逆に言えば、ユニバーサル・サービスを提供せざるを得ない郵便事業は、もともと公共財的な性格をもっており、民間企業では運営できない事業であることを政府自らが証明しているようなものです。
(3)官業の民業圧迫は続く
郵便貯金・簡易保険の現在の残高は約350兆円もあります。国民資産は1400兆円と言われていますので、約4分の1が郵貯・簡保で保有されていることになります。
このような膨大な資金を抱える郵貯・簡保が民営化された場合、他の民間の銀行や生命保険会社に与える影響ははかり知れません。例えば、民営化後も10年間は政府が株式を保有していますので、国の信用力を背景に融資業務を拡大していけば、地方の零細信用金庫や信用組合は競争に負ける可能性が出てきます。生命保険についても、民間会社の吸収合併が続いた経過から、郵便保険会社が信用性を売り物に営業活動を展開する可能性があります。 これまでも金融の分野で、官業の民営圧迫として政策的対応を求められてきましたが、今回の郵政民営化でも、民間企業との間で競争条件のイコール化が保障されるには至っていません。政府は、この民業との公正・公平な競争を保証する施策を打ち出すべきです。
(4)公社・公団などの改革問題
郵貯・簡保で集められた資金は、旧大蔵省の資金運用部に集められ国債消化の原資になったり、あるいは財投債などを通じて政府系の金融機関や公社・公団といった公的セクターに流れています。しかも、ここでの運用は極めて効率が悪く、不良債権化しているものもあります。
そこで、累積する国債や公社・公団の抱える諸問題を解決する手段として、この資金源つまり「入り口」となっている郵貯・簡保を民営化して資金源を絶つべきだ、とする意見があります。これは郵政民営化を支持する人々がよく口にしますが、問題をすり替えた本末転倒の議論だと言わざるを得ません。政府系の機関が無駄遣いをしたり、収益をあげる努力をしなかったり、あるいは天下り人事が改められないのなら、その事業そのもの廃止や休止、合理化・統合を徹底的にやることが先決だと考えます。
以上、幾つかの問題点を指摘いたしましたが、来年の通常国会から始まる郵政民営化法案への審議にむけ、国民にとって望ましい金融サービスや地域における郵便事業のあり方やサービスの向上、さらには郵政公社職員の雇用・労働条件の確保などについて、民主党内の議論を踏まえながら対応していきたいと考えます。
──加藤としゆき
