2009年8月10日
民主党が政権獲得に向けマニフェスト(案)を発表
はじめに
7月27日、民主党は8月30日投票の衆議院選挙にむけたマニフェスト案(以下マニフェスト)を決定し発表しました。今回のマニフェストは、選挙において与党との違いを明らかにする政策集ということではなく、まさに政権交代を実現する中で新政権においてどのような政策を実行するか(what)、またどのような体制で実行するか(how)という公約そのものです。当然、政権をとれば実行責任が問われます。それだけに、民主党としても財源対策を含めた整合性のあるものを打ち出しました。
今回の民主党のマニフェストの発表は自民党の発表に先立ち、先手をとって国民にアピールしたばかりでなく、また内容的にも日本の将来設計を見据えた真の改革をめざす内容となっています。この主要項目について紹介します。
1、まずは政策を実現するための政権の仕組み
民主党のマニフェストが強調する基本的な考え方は、「コンクリート(公共事業)ではなく、人間を大事にする政治の実現」であり、具体的には、「すべての予算を組み替え、子育て・教育、年金・医療、地域主権、雇用・経済に税金を集中的に使う」ということです。そして、これを実現する政治理念や政策の基調について次の5つの原則を掲げました。
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第1原則 官僚丸投げの政治から政治家主導の政治 第2原則 政策決定を内閣に一元化する体制 第3原則 各省庁の省益優先から、官邸主導の国益優先の政治 第4原則 タテ型の利権社会から、ヨコ型の絆の社会 第5原則 中央集権から地域主権の政治体制 |
つまり、戦後、自民党中心の政権運営は、省庁間の利害を優先した縦割り行政、政治家による地元選挙区への利益誘導、国民生活よりも業界利益を優先した政策遂行など、いわゆる「政・官・業」の癒着構造に根ざしたものでした。民主党は、この政治構造を打破し、あくまでも「官から民へ」「国民生活優先」の政治を行おうというものです。そして、この政治理念に関わる5原則にもとづき、具体的な政権運営・統治機構を作るために、次の5つの施策を打ち出しました。
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①政府(各省庁)に大臣・副大臣・政務官・大臣補佐官として、国会議員約100人を配置する。 ②事務次官会議は廃止し、閣僚委員会を活用して政治家による意思決定を行う。 ③総理大臣直属の国家戦略局を設置し、国家ビジョンや予算の骨格を策定する。 ④事務次官・局長などの幹部人事は、業績評価などにもとづき政治主導で実施する。 ⑤天下りあっせんは全面的に禁止し、「行政刷新会議」を創設して予算の無駄を排除する。 |
このように、民主党のマニフェストは、個別の実現すべき政策を掲げる前に、官邸機能の強化と官僚制度の改革をはじめとする統治機構に関する政策を打ち出しました。これには、それなりの理由があります。民主党がいくら立派で整合性のある政策や基本理念を打ち出しても、長年にわたり自民党が築いてきた政治的体制下では、国民生活優先のための政策は実行されないということです。
戦後、一貫して中央官庁(霞ヶ関)は、政権党である自民党と連携し、相互依存関係の中で政策を立案し、予算案を編成してきました。その成果として、許認可行政や補助金の配分で自民党支援団体等に公的な利益の一部を還元するという構造を維持してきたのです。これら官僚が作り出す政策や予算の使い方は、国民生活や国民の権利を優先するものではありませんでした。戦争被害や公害被害の個別の補償についても、例えば、水俣病被害者や原爆症患者による裁判が現在も続いていることを見れば明らかです。
そこで、民主党は政権をとったとしても、中央官庁が依然として旧来の手法で政治に強い影響力を与えるなら、国民生活重視の民主党の政策は実現できないという認識にたち、まず最初に「官から民へ」「官から政治へ」の統治機構の変更を打ち出したのです。但し、民主党が打ち出したこれらの施策は、決して「役人バッシング」をしようとするものはありません。国民生活を優先し、消費者の立場や納税者の立場を尊重した政治を推進していくためには、どうしても現在の官庁の在り方や公務員制度そのものを改革していかなければならないのです。そこには、国民から負託を受けた国会議員・政治家が自らの責任で法律を作り、政策を遂行することが求められているのです。議院内閣制のもとで、立法府と行政府が新たな関係を築き、国民のための政治を推進していくことを民主党は求めているのです。このことを国民の皆さんには是非とも認識していただきたいと思います。
3、国民の皆さんに訴える主要施策
民主党はマニフェストの中で様々な政策の遂行について国民の皆さんにお約束しています。この中で、国民生活に大きく影響する重点政策については、次に掲げる10の政策ではないかと考えます。
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政策項目 |
具体的政策事例 |
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①子ども手当の創設・ 出産支援 |
●中学校卒業まで子供1人当たり月額26,000円を支給する。 ●出産一時金55万円を支給する。 |
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②高校の授業料の無 償化など |
●公立高校の授業料を無償化する。 ●私立高校生は、親の年収500万円超は12万円/年、年収500万円以下は24万円/年を支給する。 ●生活保護の母子加算を復活させる。 |
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③中小企業支援
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●中小企業の法人税率の18%から11%へ引き下げる。 ●「中小企業元本返済猶予法」を制定する。 ●不当な値引きや押しつけ販売などを禁止する「中小企業いじめ防止法」を制定する。 |
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④高速道路無料化と暫定税率の廃止 |
●首都圏・阪神圏を除き、高速道路を無料化し、地域経済の活性化をはかる。 ●道路特定財源の一般財源化により、ガソリン税・軽油取税・自動車取得税・自動車重量税の暫定税率を廃止する。 |
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⑤年金改革 |
●年金記録被害者への「一括補償」を行う。 ●「年金通帳」の発行による年金情報を管理徹底する。 ●年金制度を一元化し、月額7万円の最低保障年金の実現化をはかる。 |
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⑥医療制度の抜本改革 |
●後期高齢者医療制度を廃止する。 ●医学部学生の定員を1.5倍化するとともに、看護師など医療従事者の増員をはかる。 ●ヘルパーの給与改善などにより介護人材を確保する。 |
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⑦農業における戸別所得補償制度の創設 |
●良質で競争力のある農産物の生産を促進するため、生産コストと価格との差額を補償する制度を創設する。 |
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⑧地域主権の確立・ 補助金の廃止 |
●ひも付き補助金の地方の自主財源化をはかる。 ●国直轄事業に対する地方負担分を廃止する。 |
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⑨職業訓練制度の拡充最低賃金の引き上げ |
●月額10万円の手当付きの職業訓練を実施する。 ●派遣切りをなくし、製造業への派遣は原則禁止する。 ●最低賃金を時給1,000円とし、中小企業へは別途支援策を講じる。 |
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⑩郵政事業の見直し |
●地域社会を活性化するために、郵政事業の抜本的な見直しをはかる。 |
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これらの政策につきましては、マスコミを含めて社会的な評価が高まっていますが、一方で、自民党や公明党の与党側は、「大衆迎合のバラマキ施策」「財源の手当もない夢物語」などの批判を強めています。しかし、実際、7月31日に発表された自民党のマニフェストは、民主党の個別政策を意識した対抗策となっており、また民主党を批判した財源についても実は何ら明確にされていないのです。
民主党のこれらの重要政策は、小泉政権前後から実施されてきた市場万能主義にもとづく政策が失敗し、国民生活と経済に大きな犠牲を強いたという経過のもとで、与党の政策失敗をフォローし、そして国民生活に安心と希望と与えるものを打ち出したものです。これまでの政府の政策についてプラス評価をすることしかできない与党にはこれ以上、政権を任せてはいけないということです。
4、自民党マニフェストの問題
ここで、民主党と自民党の政策で大きな違いがあるものを見てみます。
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項 目 |
民主党 |
自民党 |
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子育て支援 |
月2.6万円の子ども手当、公立高校の無償化 |
3~5歳児の幼児教育無償化、給付型奨学金の創設 |
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生活費支援・成長政策 |
ガソリン税などの暫定税率の廃止、高速道路の無料化など |
女性・高齢者の雇用促進などによる家庭収入の100万円増 2010年度後半には2%の経済成長 |
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地方財政の充実 |
国の直轄事業の地方負担は廃止、国から地方への「ひも付き補助金」の廃止・「一括補助金」化 |
国の直轄事業の地方負担は広域事業に限定・維持管理負担金は2010年度から廃止、地方消費税の充実を検討 |
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消費税引上げ |
4年間は消費税を引き上げない |
経済状況が好転後、消費税を引き上げ |
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地球温暖化対策 |
温暖化ガスの排出規制2020年1990年比で25%削減 |
温暖化ガスの排出規制2020年2005年比で15%削減 太陽光発電を2020年に20倍、2040年に40倍に拡大 |
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国会改革 |
衆議院の比例定数を80削減、国会議員の世襲を禁止 |
衆議院は次々回の選挙までに1割以上削減、10年後に衆参で3割以上削減、国会議員の世襲禁止は次々回の選挙から |
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自衛隊の海外派遣問題 |
自衛隊の武力行使は専守防衛の原則にもとづく。国連の要請にもとづく国連平和活動に積極参加 |
自衛隊の海外派遣を随時可能にする「国際協力基本法」を制定 |
自民党の政策の大きな問題は、①現状の政策の延長線上にしかものごとを見ていないこと、②中期的にしか実現できない案を直ぐにでも実現できるかのような案であること、③財源的にも小さく、政策に大胆さや改革のダイナミズムが見られないこと、④4年間の国民視点に立った反省がないこと--などです。
この点、民主党の政策は、財源対策を含め、現実的で改革を大きく意識したものです。とくに、これらの施策を講じるための財源については、①無駄遣いの削減により9兆1000億円、②いわゆる埋蔵金の活用5兆円、③租税特別措置制度の見直し2兆7000億円--計16兆8000億円を試算しています。
このように民主党のマニフェストは、国民の多くの皆さんより理解をしていただき、政権選択の判断材料になると思われます。とくに、財源問題は国民の力強い支持と支援こそが実現の原動力であり、選挙結果「政権交代」が第一の解決策であります。
